電線管とは、電気工事に使用される配管類のことで、配線を通すために壁や天井に敷設して使用します。
電線管を使用する目的としては、配線の保護、メンテナンス性の向上、建物の美観の確保があります。
配線をそのまま敷設することもありますが、電線管を使用することで、電線やケーブル等の配線を外部からの衝撃や直射日光から保護することができ、配線の損傷や劣化を防ぎ、電気的な不具合を未然に防ぐことができます。
配線の追加や配線の更新を行う際には、天井や壁の内部等の作業を行うことができない隠ぺい部分でも、作業を比較的容易に行うことができるためメンテナンス性が向上します。
また、屋内・屋外ともに配線を露出して施工する必要がある場合に、電線管を使用することで美観を損なわずに配線を敷設することができます。
このように多くのメリットがありますが、電線管には金属管、合成樹脂製可とう電線管など様々な種類がありそれぞれ特徴があるため、施工箇所に応じて適切なものを使用する必要があります。
金属管
金属管とは、曲がりや柔軟性も無い真っすぐで堅固な金属製の管です。
電気工事で使用される金属管の種類には3つあり、薄鋼電線管(うすこう、C管)、厚鋼電線管(あつこう、G管)、ねじなし電線管(E管)があります。
それぞれ金属の厚みが異なり、ねじなし電線管→薄鋼電線管→厚鋼電線管の順に厚くなっています。
ねじなし電線管と薄鋼電線管は屋内によく使用され、厚鋼電線管は衝撃に強く耐候性にも優れているため屋外によく使用されています。
金属管の加工は、パイプベンダーという工具を使用することで、曲げ加工を行うことができます。
パイプベンダーでの加工は、手間やある程度の技量が必要となり、さらに管の径が大きいものは加工することも難しいため、既に加工されている付属品を使用することで、様々な施工場所や施工方法に対応することが可能です。
金属管を用いて行う金属管工事は、展開した場所や隠ぺい場所、乾燥した場所や湿気又は水気のある場所など、幅広い範囲で敷設することができるのが特徴です。
また、金属製の管を使用していることから、外部からの衝撃にも強い施工方法です。
ただし、湿気の多い場所又は水気のある場所に敷設する場合は防湿装置を施すことや、金属管内では電線に接続点を設けないことなど、施工方法が決められているため注意する必要があります。
金属製可とう電線管
金属製可とう電線管は、1種と2種の区別がありますが、現在では2種金属製可とう電線管のことを言います。
金属製可とう電線管の中にも、管の表面に亜鉛メッキを施したものとその上にビニル被覆を施したものがあり、ビニル被覆を施したものは、耐食性や防水性が優れています。
金属製可とう電線管を用いて行う金属可とう電線管工事は、金属管工事と同じように幅広い範囲で施工することができます。
金属製可とう電線管は、蛇腹状の金属製の管で、名称の通り可とう性=柔軟性があり、加工が難しい金属管の曲がり部分の接続や電動機など振動する機器と金属管の接続に使用されます。
また、建物のエキスパンション部分に敷設される金属管に可とう性を持たせる用途としても使用されることがあります。
エキスパンション部分とは、構造的に切り離された建物同士を接続している部分です。
エキスパンション部分にそのまま金属管を通過させてしまうと、地震が起きた際の建物の揺れの違いにより金属管に負荷がかかってしまい破損する恐れがあります。
建物の揺れに応じて、金属製可とう電線管部分が可動し負荷を軽減します。
硬質ビニル電線管
硬質ビニル電線管とは、金属管と同じように真っすぐな樹脂製の管でVE管と呼ばれています。
樹脂製なので金属管のように錆びることがなく、軽量で安価であるというメリットがあります。
また、絶縁体である樹脂製のため施工性も優れています。
管の色も様々な種類があり、塗装を施さなくても建物の美観を損なわずに施工することができます。
VE管を用いて行う合成樹脂管工事についても、金属管工事等と同じように幅広い範囲で施工することができます。
金属管と比較して耐衝撃性や耐候性は劣りますが、現在では耐衝撃性や耐候性が優れた製品もあるため、屋外のような劣悪な環境下でVE管を使用する際には、製品性能を確認して検討する必要があります。
VE管の加工は、トーチランプというバーナーで加熱することにより曲げる・伸ばすといった加工を行うことができます。
また、付属品には可とう性のあるものや後述するPF管と接続することができる付属品もあるため、自由自在に配管を施工することができます。
合成樹脂製可とう電線管
合成樹脂製可とう電線管は、CD管とPF管の2種類があります。
CD管は自己消火性がない、コンクリート埋設用の合成樹脂製可とう電線管です。
CD管は、主にオレンジ色の管なので、PF管と区別がしやすくなっています。
PF管は自己消火性があり、露出配管と隠ぺい配管のどちらの施工方法でも使用することができます。
また、PF管の中にはPFS(単層構造)、PFD(複層構造)の2種類があります。
屋外でPF管を使用する必要がある場合には、より耐候性や耐久性に優れたPFDを使用するほうが望ましいです。
合成樹脂製可とう電線管は、金属製可とう電線管と同じように可とう性があります。
金属管と比較して強度は劣るものの、軽量で加工がし易いため施工性が良いというメリットがあります。
合成樹脂製可とう電線管の加工は、電工ナイフで容易に切断することができ、管相互をワンタッチで接続できる付属品もあります。
主に使用されている場所は、コンクリート埋設や天井内、壁内の隠ぺい部分などの強度があまり必要ではない場所に使用されています。
まとめ
このように、単に電線管といっても様々な種類があるため、施工する場所に応じて電線管を選定することが必要です。
それぞれの電線管の特徴を把握することで、使用する環境や施工方法、コスト面などを考慮した最適な施工を行うことができます。
施工に際しては、それぞれの管に細かい施工方法の決まりがあるため、しっかりと基準等を確認して適切な施工を行うことが必要です。